近江ARS 第4回「還生の会」【第1・2・4部】映像(約225分)
¥6,000 税込
本アーカイブ映像は、2023年2月19日に三井寺にて開催しました仏教学第一人者・末木文美士氏の第4回「還生の会」の【第1・2・4部】映像です。配信期間は、2023年6月27日〜2024年12月31日です。

HYAKKEN MARKETでは、第4回「還生の会」の映像配信(有料)をしております。
ぜひ、この機会にご視聴ください。

【第1部:兆し】観阿弥・世阿弥と後を継ぐ者たち――河村晴久氏
 第4回の特別仕立ては、河村氏による能仕舞だ。観阿弥、世阿弥、元雅、金春禅竹。能の草創期の系譜をひと通り紹介したのち、「禅竹が坂本龍一なら、観阿弥は滝廉太郎というほどの隔たり」と見立てた。松岡が絶妙なセレクションと称えたこの日の演目は、世阿弥作『屋島』と元雅作『隅田川』である。
 600年の間、師匠から弟子へと口伝されてきた能は、今も決して古くない。『屋島』で死後も地獄で苦悩する義経の姿を描いた世阿弥が伝えたかったのは、戦うことの無意味であるはず。しかしながら、現代においても戦いは一向になくならない。『隅田川』は、死を目前にした人間の心の有り様を描きだす。「人間の営みは自然の一部でしかない」という元雅の死生観は、災害に脅かされる現代人にも通ずるのではないか。能の中に私たちの問題がある。演者の役割は、今ここで舞う意味を自問し、それを観客に手渡していくことである。

【第2部:語り】中世仏教のダイナミズム・鎌倉仏教観の転換――末木文美士氏
 末木氏は、複式夢幻能におけるワキの役割から話し始める。最初は日常的な「顕」の世界にいる観客が、ワキによって非日常的な「冥」の世界へと導かれる。南北朝の動乱を通して戦いと死に直面し続けた中世の人々にとって、日常世界は移ろいやすい仮のものと捉えざるをえなかった。「顕」よりも「冥」の世界にこそリアリティを持てたはずという。中世仏教の変遷も、「顕」と「冥」の構図で見ることが有効である。
 本題の中世仏教に入り、旧仏教の堕落に対して鎌倉新仏教が出現したと新旧の仏教を二項対立的に見るべきでないという。鎌倉新仏教の出発点となる南都復興運動は、後白河法皇を無位無官だった重源が自らの膨大な仏教ネットワークで支えた。旧仏教の僧はもちろん、栄西や法然らの新仏教の担い手たちにも広がっていく。新旧仏教は、一体となって仏教復興を盛りあげたと言った方がいい。
 続いて、中世仏教の特徴として、個人による実践を軸とすることをあげる。重要な役割を担った人物として、源信と覚鑁があがる。「仏教の私化」というキーワードで、平安初期の安然から、源信、覚鑁を経て、鎌倉後期の無住までを繋いだ。続いて、政治に領域をうつし、藤原道長、平清盛、後白河・後鳥羽の院政に通底する「仏教の私化」を紐解く。仏教の変遷は、信仰の面のみに留まらず、政治、社会、芸術も含めた時代背景全般とともに見ていくべきと語る。

【第4部:交わし】ワキとしての仏教――松岡正剛、末木文美士、福家俊彦
 松岡は、「修羅」というキーワードを持ち出す。貴族社会から武家社会に移ると、死がより身近になる。個人に潜む「修羅」に注意を向けたのが、世阿弥であり、空也、慶滋保胤、源信だった。松岡は、置き去りにされた修羅に注目した中世日本の世界観こそ、現代日本に必要と強調する。私たちが追いやってきた精神性に、今こそ注目すべきではないか。
 世界を「顕」と「冥」の構図で捉え「冥」の世界にこそリアリティを見出す捉え方こそ、中世のメインストリームだった。これを人々に示すのが芸術と宗教が担ってきた役割と三者が異口同音に語る。時間や空間の秩序が壊され、過去と現在が入り混じる。神と人間、死と生も、「かくるるもの」と「あらわるるもの」が混ざり合う。これが日本的な世界観の真骨頂である。話題は日本を飛び出し、時間がリニアに流れる西洋、仏教よりも儒教を選んだ中国にまで及んだ。
 河村氏に続き、末木氏・松岡・福家という三人のワキの導きによって、中世の日本人と日本仏教が体験した修羅が、今ここにありありと現出した。その修羅は、過去のものではない。現代におけるリアルである。

<イベントの概要>

◎名称
第4回「還生の会」

◎内容
テーマ|「中世仏教のダイナミズムー鎌倉仏教観の転換」

【第1部】兆し |松岡正剛、福家俊彦、河村晴久
【第2部】語り |末木文美士ソロトーク
【第4部】交わし|末木文美士、松岡正剛、福家俊彦 ほか

◎日時
令和5年2月19日(日)

◎場所
【第1・2部】大津市伝統芸能会館|〒520-0036 大津市園城寺町 246-24
【第4部】三井寺事務所|〒520-0036 滋賀県大津市園城寺町 246

◎出演
末木文美士 未来哲学研究所所長
松岡正剛  編集工学者
福家俊彦  三井寺長吏
河村晴久  能楽師

◎定員
約80名

◎推薦図書
末木文美士著『禅の中世』 臨川書店
末木文美士著『日本思想史の射程』 敬文舎
末木文美士著『仏教からよむ古典文学』 角川選書
松岡正剛著『千夜千冊エディション 戒・浄土・禅』 角川ソフィア文庫

◎主催
近江ARS(アルス)
https://arscombinatoria.jp/omi

◎お問合せ
近江ARS本部 滋賀県大津市栗林町3-1中山事務所内 中山雅文
近江ARS総局 東京都千代田区九段南2-2-8松岡九段ビル百間内 和泉佳奈子
omi@arscombinatoria.jp (近江 ARS 担当 中山・和泉)


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https://arscombinatoria.jp/omi
商品名
第4回「還生の会」【第1・2・4部】映像
内容
【第1部】兆し |松岡正剛、福家俊彦、河村晴久
【第2部】語り |末木文美士ソロトーク
【第4部】交わし|末木文美士、松岡正剛、福家俊彦 ほか
時間
【第1・2部】約120分
【第4部】約105分
配信期間
2023年6月27日〜2024年12月31日
出演者
末木文美士 未来哲学研究所所長
松岡正剛  編集工学者
福家俊彦  三井寺長吏
河村晴久  能楽師
運営
近江ARS
企画
百間
協賛
中山事務所 三井寺
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